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介護業界のはなし

母の働く介護施設が赤字だそう。
私の母は、地域密着型の介護施設で管理者を務めている。看護師が常時いるため、末期ガンの人など重度の高齢者を受け入れており、看取りも行なっていることが特徴の施設だ。そうした利用者は単価が高いため、母がいる事業所は数年間常にグループ内売り上げ1位を保っていたそうだ。しかし、これが赤字になり最下位となってしまったという。

原因は?と聞くと、「そういう波だ」という。偶然らしい。
というのも、契約したばかりの利用者がすぐに寿命を迎えてしまう、ということが近頃は重なっていた。つまり、利用者の数が減り、見込めるはずだった売り上げが頓挫した結果、赤字になってしまったということらしい。

え?お客さんいないの?待機児童ならぬ、待機高齢者いないの?

 

母は、新しい顧客を獲得するのに悩んでいて、ようやく最近新しい利用者との契約を進めることが出来ているらしい。
なんか単純に、介護にまつわるマッチングサービスとかメディアとか、ないの?って思った。

 

話を聞いていると、施設を利用したい人が介護に関する情報を初めに得るところは、役所か病院らしい。介護が必要と感じて家族が自ら役所に相談しにいくか、退院する際に病院から案内を受けるかのどちらかが多いという。(多分)
ここで問題なのは、病院という名のデカイ組織が、組織内で顧客を回していること。つまり、病院が患者を退院させたらグループ内の介護施設なりを紹介し、サービスを施しているという。したがって、そこから溢れてしまった人を受け入れてきたのが、母が働くような施設だという。

 

第1志望じゃないんかい!
そして、それも口コミや役所などの紹介を通して、施設に訪ねてくるのが通常パターンだそうだ。

なんてアナログ!
強いていうなら、施設の情報はフリーペーパーにチョロっと載っているとか、厚生労働省のページにチョロっと載っているとか、とにかく誰の目にもつかないような所にあるらしい。
母曰く、「結局病院も介護も、あの先生が良い、あのケアマネージャーが良い、とか人の問題だからね〜口コミだね〜」らしい。介護業界ってそういうものだったのか...

 

でもさ、介護ってこれからより多くの人がぶち当たる問題だよね?みんな区役所行って聞くの?てかみんな働いてるしそんな時間なくない?あなたはこっち行ってくださいとか、これを持ってきてまた来てくださいとか言われるの?鬼めんどくない?みたいな?

 

超高齢者時代で社会保障制度もコロコロ変わる。介護なんて当事者にならないと知ろうとしない情報だけど、すごく複雑で多種多様。母は、「こんなことも知らないのか〜」と仕事をしていて感じることが多いそうで、「制度を知らないことは本人とってマイナスになっちゃう。まあだからケアマネがいるんだけどね」と言っている。介護についての情報メディアがあって良いと思うし、赤字で悩んでる高齢者向け施設があるくらいだったら、お互いを繋げるマッチングサービスなどのメディアがあっても良いんじゃないかと思った。

 

実際、「介護」でTwitter検索をかけると、介護現場で肉体労働をする人の問題や愚痴が散見され、情報は落ちていない。ユーザー検索でも、介護にまつわるニュースを流しているものが多く、自分はどうすれば良いのかという答えは出ない。App storeで検索しても、シフト調整アプリやや求人など、働き手へのものが多かった。介護施設検索サイトもあるが、私たちがまず知りたいのはどんな施設がどこにあるか?より先に、どんな種類の施設に入るべきか?だと思う。介護の入り口を扶けてくれる人って、役所と病院以外に、今あるのかな。知りたいことがあるときはまず検索するのが常なのに、介護はそれが出来ない。

 

実際に介護についてリアルタイムで相談できるチャットサービスとか、Uberみたいに人を評価しちゃうとか、そもそも介護について情報を発信したり利用者と施設の導線をつくったり、介護をもっとやりやすく、ストレス少なめで行うために出来ることって沢山ある気がする。とにかく、私たちが「介護」へアクセスするときの距離がすごく遠いことを思った。

話が逸れるけど、介護というと施設現場の労働環境の問題が取り沙汰される。高齢者に暴力を振るわれるケースなどもよく耳にするけれど、そもそも介護施設と高齢者のマッチングが上手くいってなくて起きてる場合もあるのでは?と思い始めた。

現場の労働環境とか、働き手の問題は深刻だし重要だと思う。でも結局、やらなきゃいけないのは自分自身だから、アクセスしにくい介護にどう関わってくか考えることも大切だと思う。これからは、そもそも介護ってどうやるの?とかどうやって介護を始めるか?とか、そうした一般人の生活に近い問題に目を向けてもいんじゃないかと思う。